第九回ゲスト 宅嶋淳さん(表現者)

ATSUSHI TAKUSHIMA

わたし(秋山羊子)が大好きな人をお招きして、そのゲストの方にとっての「人生の一枚」をめぐって対談をするコーナーです。

第九回目にお招きする方は、宅嶋淳さんです。
わたしの音友、音楽仲間で大好きな「た」さん。パパのようで弟のようでちっちゃな子供のようで、何かいろんなかおをもってる人。
「好きなものが多すぎて困っちゃうよ〜」とあるときMCで言ってたの。ほんと愛にあふれた人というか少年のような人です。
そしてとっても酒好き。

宅嶋淳さんが持ってきた一枚
早川義夫 - 歌は歌のないところから聴こえてくる

羊子(以下、Yoko):とてもよかった。泣きそーになったわ。なんかすごいね。歌詞が入ってくるの。びしばし。けどね、おしつけがましいわけじゃないのよ。あったかいの。とっても。誰かにちゃんと向けられてつくられてる感じがしたの。

宅嶋淳さん(以下、Taku):ですよね、その誰かの輪郭や温度を感じたりして音楽は孤独じゃないなーと思ったりします。

Yoko:宅嶋さんはどんなときにこのアルバム聴くのですか。わたしはよく食事中に聴くのですけど、これは聞き流せないから食事中は無理よね〜。

Taku:独りで寝る前にスーッと聴き入ってしまいます。特に「天使の遺言」という歌が特に好きです。腰のあたりをポンっと軽く叩かれたような気持ちになります。

Yoko:あ〜その曲いいですよね。「迷うことが生きることだと恥ずかしそうに書いてある」ってところがすきです。「恥ずかしそうに」ってところが絶妙です。

Taku:そうそう、そこに強く反応しましたね。

Yoko:ねこの曲、「猫のミータン」なんてキュートなのかしら。ただ可愛いだけじゃなくて深い。マンガが浮かんできちゃった。まるでマンガの原作があって、それを音楽で表したみたい。カバーしたいわ〜。早川さんの曲を宅嶋さんがカバーしたらあいそうだけど、カバーしたことあるのですか?

Taku:カバーは「僕らはひとり」「身体と歌だけの関係」をよくやっています。

Yoko:あ、「僕らはひとり」ってきいたことある。ハイポジの曲よね。せつない感じね。

Taku:「ひとり」が共鳴する感じがすごく好きなんです。

Yoko:宅嶋さんのカバー聴いてみたいな。「君の亭主」これきくと味噌汁つくりたくなっちゃうのはわたしだけかしら?(笑)のむんじゃなくて、作りたくなるのよね〜ぷ〜んと味噌汁のあの匂いがただよってくるのよ〜

Taku:「竜二」って映画をいつも思い出します。駄目男で伊達男。

Yoko:へーどんな映画なのかしら?気になるわ〜

Taku:アウトローの映画です。

Yoko:あぁ、この歌そんな感じよね。「音楽」この曲が一番びしばしきた。ドキッとした。「音楽がめざしているのは音楽ではない」ってところ。とってもいい。早川さんは感じることをやめてない人。生をまっとうしようとしてる人。

Taku:(深くうなづく)

Yoko:曲がね、いい具合にロマンティック。そのせいで歌詞の人間くささ生臭さみたいのが程よくなってる気がするの。それになんて無駄のない曲たちなのかしら。でも神経質ってわけでもないのよね。ちゃんと不完全さが残ってるっていうかね。すごく思春期って感じ。

Taku:そうですね。「不完全さが残ってる」、その通りだと思います。そこがチャーミングなんでしょうね。

Yoko:うんうんそうよね。チャーミングね。宅嶋さんは早川さんの音楽はいつ頃どんなきっかけで出会ったの?

Taku:若い頃レコード屋で働いていたので、昔から聴いてはいましたが大好きになったのは30歳過ぎてからですね。

Yoko:そうなんですかぁ。レコード屋で働いてたんですか。

Taku:早川義夫さんの音楽を身近に感じられたのはこのアルバムが最初でした。それまでは歴史上の人物=徳川家康、とか有名人という印象だったのですが、このアルバムの主人公はすごく人間くさくて、恥ずかしい事も苦しい事も重ねて一緒に食べちゃう。「悲しい性欲」なんてクスクス笑ってしまいながらも、誰かを好きな自分を重ねて聴いています。

Yoko:徳川家康かぁ〜(笑)。すうっと入ってくる時期とかタイミングってありますよね。わたしは早川さんの音楽をちゃんときいたことなかったんだけど、このアルバムはすごく「降りてきてる」って感じしたわぁ。なんかすごく気持ちいいっていうか、スッキリするっていうか。ところで最後の2曲ってエレピだし感触がちがうわね。

Taku:最後の2曲はプライベート録音って事で違う音色なんだけど、Robert Wyattの「Old Rottenhat」を思い出してしまいます。僕の中では早川義夫さんもロバートさんも線で繋がっているからなのかもしれません。

Yoko:ロバートワイアットか〜「Old Rottenhat」はきいたことないな〜。

Taku:素敵なアルバムですよ。羊子さん、きっと気に入ると思います。

Yoko:今度買ってみます。今回一枚選ぶの迷ったと思いますけど選んだ理由教えてもらえますか。宅嶋さんにとってこのアルバムはどんな作品なのですか。

Taku:僕にとっての「おなかの薬」です。他人と話をするのが好きで、色々な人と関わりたいと思う反面自分の許容量が小さいせいか、苦しくなっておなかが痛くなるのです。

Yoko:ははは(笑)。宅嶋さんかわいいですね。もう何年も前だけど、プロデューサーの高橋信之さんと知り合って、高橋さんが早川さんの大ファンで早川さんのプロデュースもしたのよ。高橋さんが言ってたことで忘れられないのが「歌詞がぜ〜んぶきこえる」って言ってたことなの。その意味が今回よ〜くわかった。きこえるっていうか伝えるのがすごくうまい。いや違うな、一言一言一字一句が生きた言葉っていうか。

Taku:最近では水戸華之介さんのソロをよく聴いていますが、水戸さんも早川さんと同じく考えながら聴くより感じながら聴く音楽です。羊子さんもそうなんですけど、伝えようとするより感じた結果で伝わる歌が僕の人生には必要なんだと思います。「おなかの薬」のように、じわーっと効いてくるんです。

Yoko:ありがとう。感じながらきくっていいですね。最近バンドネオンの小川紀美代さんと共作した曲のテーマがまさに「考えるな感じるんだ」だったの。旬なテーマなのでうれしいな。水戸華之介さんは初めて聞くお名前です。どんな人なのかしら?

Taku:「アンジー」というバンドを長くやっていて、今はソロで活動している方です。音楽は考えずに感じて楽しみなよ、と教わった先輩のような人ですね。独特の世界観を持っている人です。

Yoko:へ〜水戸さんの歌もきいてみたいな。

Taku:はい!素敵な歌です。

Yoko:早川さんと宅嶋さんと一緒にライブできること本当に本当に今から楽しみ。「た」さんありがとう。セッティングしてくれて。そしてこのアルバム教えてくれて。

Taku:こちらこそ。楽しみですよね。

宅嶋淳さんのウェブサイト kusaongaku

LIVE:2009年7月4日(土)Dream Boat(福岡)
出演:早川義夫、bigmama、秋山羊子

(2009.5.28)

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