YOKO's Cafe Talk特別編
小山卓治さん(ミュージシャン)との対談 02

小山卓治さん+羊子


※ここから秋山羊子の出番となり、まずはソロで2曲歌いました。


〈指一本で倒されるだろう〉を聴きながら



Takuji:この動き、いいね。左手だけで弾いて、右手を自由に動かすって。

Yoko:ギターじゃ無理ですね。

Takuji:(笑)。

ボス : 元々声が高いのかな。

Yoko:そうでもないんですけど、この曲は裏声なんですよ。

ボス : 先週、キャロル・キングの映像を見たんだけど、その感じだね。何年くらい音楽やってんですか?

Yoko:北海道から東京に引っ越して6年くらいなんですけど、ライヴをいっぱいやれるようになったのは、ここ4年くらいです。


※2曲目に小山さんの曲を歌いました。

〈夕陽に泣きたい〉を聴きながら



Takuji:(イントロで)ためるねえ(笑)。

Yoko:ためちゃいますね。

Takuji:こういう“ため”、大好き(笑)。ああ、言われてみれば、キャロル・キングに聞こえるな。

Yoko:小山さんの曲にキャロル・キングの雰囲気があるからですよ。

Takuji:俺が歌うとストレートなロックになっちゃうんだけど、バラードで聞くと新鮮だな。こうやって人がカバーしてくれると、「なんだ、いい曲じゃん」って思っちゃうんだよ。

Yoko:(笑)。私も〈どん〉でそう思った。

Takuji:何だろうね。

Yoko:大事に歌うせいじゃないかな。自分の曲をカバーのように歌ったらおもしろいなと思ったんです。

Takuji:自分の曲でロックンロールをバラードに変えたりするんだけど、そうすると違う面をお客さんに見せられるし、歌ってても新鮮だしね。曲作りも一緒だと思うんだ。自分ど真ん中だけで作ると、あまり広がりを感じなくなってきた。ずっとやってるせいかもしれないけど。小山卓治に曲を提供するみたいな立場で曲を作ったりすると、自分からちょっとだけずれるんだけど、それがすごくおもしろい形で生まれたりする。

Yoko:ああ、自分に提供するかあ。

Takuji:「こいつは、ほんとはこんなこと言いたいんじゃないの?」みたいなね。自分のことを歌おうとすると、「恥ずかしいからやめとこう」とか、どさくさに紛れて削除してきたものが、ちょっと外から自分を見て作ると、平気で言えちゃったりする。

Yoko:すごい、いいこと聞いちゃった。それはいいですね。


※ここで梅津和時さんが登場しました。

〈ジンギスカン〉を聴きながら



Takuji:クラリネットとかバスクラリネットの音っていうのは、人間の声の成分に似てるのかな。すごいあったかい音する。

Yoko:ああ、なるほど。

Takuji:アルバムの最後に入ってたこの曲を聴いてゾッとしたんだ。「何てことを歌うんだろう、この人は」って。

Yoko:(笑)。

Takuji:子供の頃のことが、すごいフラッシュバックしちゃった。

Yoko:北海道じゃないのに?

Takuji:(笑)。ジンギスカンは食べなかったけどね。子供の頃の風景とか。

Yoko:すごく嬉しい。その人のものになるって。自分の歌だって思ってくれるのが一番なんですよ。

Takuji:その通りだね。

ボス:アップテンポはないんですか?

Takuji:(笑)。俺もおんなじこと聞いたんですよ。

Yoko:(笑)。ありますよ。

Takuji:でもピアノでビートを出すのって、むずかしいよね。

Yoko:そうですねえ。

Takuji:セットリストのどこにアップテンポを入れて流れを作るか、むずかしいね。俺も、3時間だろうが30分だろうが、その中での起承転結っていつも考えるな。

Yoko:いろんなパターンがあるんですか?

Takuji:セットリストを考えるのが一番大変だな。こんなにたくさん作ってきたのに、どうしてここで歌う曲が見つからないんだって思うことが、よくある。


Takuji:(梅津さんのバスクラリネットの音を聴いて)すごい音だな。

Yoko:大好きなんです、バスクラは。

Takuji:アコギのストロークなんかの場合は、秋山さんがためた時に合わせにくいんだよ。でもフレーズの楽器は自在にからめられる。その意味でも梅津さんと一緒にやるのは、おもしろいのかもしれない。

Yoko:そうですね、しばられないから楽しいです。

Takuji:でもそれは、梅津さんだからこそだよ。

Yoko:(笑)。そうですね。

Takuji:伴奏が2人いたりすると、どうしてもアレンジにしばられてしまう。

Yoko:こういうデュオだと、かなりいろんなことができますね。この時の3人っていうのも新鮮でしたよ。最近、バンドネオンの人と共演したんですけど、すごくよくて、力強いし繊細だし。小山さんともやってほしいです。合いそうな気がする。

Takuji:俺も好きな音だな。


〈コロッケパン〉を聴きながら



Takuji:この曲、リハではピアノを弾いてたけど、本番はピアノを弾かずにセンターに来て歌い出したじゃない? この時に吹いてる梅津さんのフレーズは、ピアノかギターの役目をしてるね、フレーズで。

Yoko:そう、歌いやすくしてくれるんですよ。

Takuji:秋山さんって、こんなにリハと本番が違う人だとは思わなかった(笑)。言っといてよ、先に。

Yoko:(笑)。お客さんの雰囲気が、「自由にやっていいよ」って雰囲気だったから、何でもありかなって思ったんです。

Takuji:(笑)。

Yoko:お客さんがそうさせたって感じ。すごくいいお客さんでした。やりやすかったです。すごく聴いてくれてました。

Takuji:オープンな耳で聴いてくれてたね。

Yoko:それがすごく分かった。そういうことってそんなにないから。

Takuji:対バン形式でステージに順番に出るイベントって、何も始まらない気がするんだ。楽屋もなんか気まずいし(笑)。

Yoko:(笑)。

Takuji:だから、こういうテーマのあるイベントだと、お客さんも違う楽しみ方を見つけてくれるだろうし、新しいミュージシャンと出会うこともできると思う。

小山卓治さん+羊子

〈バッティングセンター〉を聴きながら



Takuji:秋山さんのサイトのプロフィールに、“影響されたアーティスト”が何人か書いてあって、その中に唐突に『松田聖子』ってあったじゃん?

Yoko:好きですねえ。

Takuji:この曲を聴いた時に、一瞬それを思い出しちゃった。

Yoko:あ、そうですか! それは初めての感想です。

Takuji:(笑)。いろんなアーティストに影響を受けてきた中で、この曲の時だけ、軽く松田聖子が舞い降りてきたのかな。

Yoko:(笑)。

ボス : (立ってピアノを弾く秋山さんの映像を見て)リトル・リチャードみたいですね。

Yoko:(笑)。

Takuji:(笑)。

ボス : 体が動く感じがいいですね。

Takuji:ギターも、弾く時に見せる方法として、肩を入れて弾くことがあるな。

Yoko:ああ、パフォーマンスとして。

Takuji:うん。

ボス : 自分の動きっていうのは、場所によっての動き方を自分で研究するべきですね。

Takuji:俺がいつも考えてるのは、ライヴハウスの大きさに合ったパフォーマンスを、必ず一回りくらい越える動きをすること。セットリストの組み立て方もそうだし、ライヴハウスからはみ出るくらいのものにしようと思ってる。頭に中に大きい会場を思い浮かべてると、おのずと動きも変わってくる。さっき秋山さんが右手を自由に動かしてるのは、すごく素敵だったな。

Yoko:意識できればいいのかしら。

ボス : 小山の場合は、ギターにしてもピアノにしても、前と違う手法でやってる?

Takuji:ピアノにはピアノの自由さがあるから、それに気づくとおもしろくなりますね。

ボス : 歌は間の勝負しかないから、間の中で、どういう入り方がかっこいいか、いくつかパターンを持ってるといいよね。

Yoko:ためたり突っ込んだりとか?

ボス : 曲によってだけど。

Yoko:ためるのはあるけど、突っ込むのはないな。

Takuji:(笑)。ためるのも勇気いるけど、突っ込むのはもっと勇気いるよ。


〈いれて Irete〉を聴きながら



Takuji:バスクラリネットは、息を吹き続けてればずっと鳴るのかな?

Yoko:梅津さんは、吹きながら息を吸うんですよ。なかなかできないらしいんですけど、習得してるみたい。

Takuji:このソロを聴きながら「いつブレスしてんの?」って思ってた。

Yoko:そうですよね。

Takuji:口をポカーンと開けて聴いてたよ。

Yoko:(笑)。


※ここから小山さん+梅津さん+秋山羊子でセッションとなりました。

〈種〉を聴きながら



Yoko:この歌って、歌えば歌うほどよくなっていく曲だと思います。CDのコーラスもすごい綺麗ですね。

Takuji:エンディングは、リハの倍くらいやってたな。ほんとに終わりたくなかった。

Yoko:お客さんもそうだったでしょうね。


〈祈り〉を聴きながら



Takuji:この曲はワルツで、アイリッシュ伝統のメロディを使ってるんだ。

Yoko:ああ、そう感じました。

Takuji:昔、アイルランドのダブリンに行ったことがあって、パブで、おっちゃんたちがギター弾きながら歌ってて、老若男女がバカ騒ぎしてたんだ。おもしろそうだったから入ってって、俺もギネス飲みながら歌を聴いてたんだ。ワルツっていうのは、横に揺れるじゃない? だからグラスの酒がこぼれない。これがロックだとこぼれる。

Yoko:(笑)。おもしろそうだから入っていくって、すごいですね。オープンな雰囲気だからでしょうね。

Takuji:そうだね。

Yoko:お祭りとかじゃなくて?

Takuji:うん、毎晩やってるみたい(笑)。

Yoko:あ、私の好きなところ。最後にメロディが変わるサビ。

Takuji:(笑)。

Yoko:ここでやられるんですよね(口ずさむ)。サビで“B♭”になって、ちょっと雰囲気が変わるところが好きです。


〈時のかけら〉を聴きながら



Takuji:この曲のリハとの違いはすごかったな。

Yoko:毎回同じことをできないんですよ。

Takuji:その自由さは、すごくすばらしいと思うよ。でも(イントロのところは)ちょっとドキドキしたよ。顔に出さないようにはしてたけど。

Yoko:(笑)そうですか。

Takuji:(エンディングまで聴いて)ああ、ドキドキした(笑)。

Yoko:(笑)。

Takuji:どこまでピークを持っていっていいか探りながらだったけど、感じるもんだね。


〈レール〉を聴きながら



Takuji:ここでもクラリネットからサックスに持ち替えたんだね。

Yoko:そうですね。

Takuji:ピアノでもリズムを出してて、ギターのストロークとのアンサンブルなんだけど、ギターはエッジが立つから、クラリネットよりサックスの方がイメージに合うと感じたんだろうね。

Yoko:このテンポ感が好きなんですよ。小山さんが入ると安定して、それなりにゆったりとした感じがすごく気持ちいいんです。

Takuji:この曲のCDのサウンドがすごく印象に残ってたから、それをどうしようかって考えたんだ。

Yoko:ああ、なるほど、そうですね。(エンディングで演奏が再度始まり)(笑)。ごめんなさい、自分勝手に入って。

Takuji:(笑)。リハでは今のところで終わってたから。

Yoko:終わってたっけ。すっかり忘れてた。

Takuji:もっと秋山さんを見てればよかったな。慌てて追いかけた。

Yoko:後ろだから見えないですよね。

Takuji:見ようと思えば見れたんだけど、また来るとは思わなかった(笑)。

Yoko:(笑)。

Takuji:秋山さんのことをもうちょっと知ってれば、「このタメは、もう1回入るタメだな」って分かったかもしれないな。

Yoko:(笑)。でも知らなかったからおもしろかったんでしょうね。知った上でまた色々とやれることもありますね、きっと。


〈君が本当に欲しいもの〉を聴きながら



Takuji:梅津和時、歌っております(笑)。

Yoko:あ、歌ってる。だって歌いたくなっちゃう曲だもん。

Takuji:嬉しいな。何て贅沢な瞬間なんだろう。3人で歌ってて。

Yoko:次が好きなんだ。“今ここから始める それは君”。

Takuji:(笑)。

Yoko:(最後を)引っ張ってる(笑)。終わりたくなかった。

Takuji:ほんとに終わりたくなかったな。

Yoko:この歌詞、毎日思ってることだもん。

Takuji:(笑)。

Yoko:お客さんもすごく楽しんでもらえたでしょうね。

<<01 | 03>>

Copyright (c) 2002-2010 akiyama yoko All Rights Reserved.
logo