第一回ゲスト 山下スキルさん(DJ)

山下スキルさん

SUKIRU YAMASHITA

わたし(秋山羊子)が大好きな人をお招きして、そのゲストの方にとっての「人生の一枚」をめぐって対談をするコーナーです。

第一回目にお招きする方は、山下スキルさんです。
スキルさんは音楽にとっても愛情をもっていて、正直で、そしてどん欲に新しい音楽との出会いを求めている人です。スキルさんのサイト<FLIP SIDE of the moon>では、独自でちょっとお茶目な視点でわかりやすく音楽を紹介しています。ちなみにいつも韓国のお酒マッコリを飲んでるイメージがあります。
去年(2007年)の12/25のバースデイ・ワンマン・ライヴではDJとして出演して盛り上げてくれました。また機会をつくって出演してもらう予定です。
スキルさんにとっての人生の一枚は何だろう。興味津々です。

山下スキルさんが持ってきた一枚
The Beach Boys - Pet Sounds

The Beach Boys - Pet Sounds

羊子(以下、Yoko):このアルバムは以前聴いたことがある気がしてて。なんかコーラスが強烈だった印象があって。このアルバムってビーチ・ボーイズの代表作ですよね?

山下スキルさん(以下、Sukiru):コーラス・グループとしての代表作ですね。このアルバム、今では録音芸術の頂点とまで言われるほどの名盤ですが、リリース当時は殆ど理解されなかったそうです。

Yoko:そうなんですか。わたしはビーチ・ボーイズっていうと「ココモ」って曲を思い出しちゃう。トム・クルーズ主演の『カクテル』って映画で使われてたから。けど「ココモ」の印象とだいぶん違った。「ココモ」はもっとゆる〜い感じで、いわゆるビーチっぽいし。

Sukiru:「ココモ」は外部のスタッフがいっぱい入って、パブリックイメージのビーチ・ボーイズを再現しようとしてるんです。力が入っているだけに、極上のリゾートミュージックになっていると思います。ただ方向性として、「ペットサウンズ」とはだいぶ違いますね。

Yoko:スキルさんは「ペット・サウンズ」を初めて聴いたとき、どう感じましたか?

Sukiru:正直なところ、僕も初めて聴いた時はピンときませんでした。それが何度も何度も聴いていくうちに体にしみ込んできた。

Yoko:あぁ、そういう感覚ってわかる。

Sukiru:曲も演奏も不思議な後味があって、何度も聴いてくうちに頭の中で完成していくような感触を持ちました。特に「Don't Talk」みたいな地味な楽曲に。いまだに聴くたびに新しい楽しみ方の発見があるし、新しい音楽のスタイルが出てくるたびに「Pet Sounds」との類似性に気がつきます。これから先もまた誰かが「Pet Sounds」の新しい楽しみ方を発見して、素敵な音楽を作るんじゃないかと思っています。音楽家の秋山さんが一聴してみて感じる所はどんなところですか。

Yoko:あらためて今回ちゃんと聴いてみて、何ていうか、ざわざわってした。奥にあるエネルギーが渦巻いてる感じで、表面上は涼しげなんだけど、熱い!曲は誰が作ってるんですか?どんな人なんだろう。

Sukiru:リーダーのBrian Wilsonです。彼は精神的に不安定なところがあって、スタジオでレコーディングしている時間が一番リラックスできたのかも知れない。

Yoko:へぇ。面白いなぁって思ったのが、歌と歌の間奏やつなぎでいわゆるソロとかないし、リズムのおかずもどこか滑稽に感じたりしたの。

Sukiru:アルバム単位で計算されて作られてるんですよね。この次のアルバムではもっと組曲的な作り方をしようとして、パズルが崩れてポシャってしまうんです。そのギリギリの所で成り立っているところがこのアルバムの魅力でもあるし、さっき秋山さんが「ざわざわっとしたエネルギー」って仰った理由でもあると思います。

Yoko:そっかぁ。そう、あとリズムとか型にはまってなくてユニークっていうか、一曲一曲感じながら楽器を入れてる感じがいいなぁって。それとちょっと失礼なんですけど、歌が上手過ぎなくていいと思ったの。何か上手かったらきれい過ぎになっちゃうし。

Sukiru:あはは。歌唱力についてはほんとに若い頃の作品ですからね。アラがあるかも知れません。楽器のひとつひとつ、特にベースラインなんかはすごく変わってるんですが、彼の頭の中では最初から完成形が見えていたといいます。アルバムの中で気になった曲ってありましたか?

Yoko:はい。いいなって思った曲が一曲あって、「God Only Knows」って曲。

Sukiru:「God Only Knows」はPaul McCartneyはじめ、世界の多くのミュージシャンがオールタイムベストソングに選んでいるんですよ。

Yoko:そうなんだ。わたしもそんな風に言われる曲つくりたい。つくるぞ!

山下スキルさんのウェブサイト http://www004.upp.so-net.ne.jp/flipside/

(2008.3.3)

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